骨粗鬆症のことを知ろう!
~骨折を防ぐために、いま知っておきたいこと~
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨が弱くなって骨折しやすくなる病気です。特に高齢期に骨折すると、入院や手術が必要になることもありますし、治療やリハビリテーションが上手く行っても要介護や寝たきりになることも少なくありません。健康に動ける日々を長く続けるために、骨粗鬆症の予防や必要な治療をしっかり続け、骨折しない強い骨を作っていきましょう。
骨粗鬆症について、一般の方向けに分かりやすい解説をまとめたものです。興味のあるホネをクリックしてください。なお、ご自身の治療については必ず主治医にご相談ください。
1知っておきたい骨粗鬆症のポイント
骨粗鬆症は、骨の強さ(骨強度)が低下し、骨折しやすくなる病気です。加齢や閉経、生活習慣など様々な原因によって骨が弱くなり、ちょっとした転倒や、時には重いものを持ち上げただけでも骨折してしまうことがあります。骨粗鬆症による骨折は、寝たきりや介護が必要になる大きな原因となり、いくつになっても骨折はしたくありません。ただ、骨粗鬆症痛みなどの自覚症状がないまま進行することが多いため、知らない間に発症して進行するので注意が必要です。早くから予防や治療に取り組むことで、将来の骨折を防ぐことが大切です。
特に、以下のポイントは知っておいてください。
骨は常に作り替えられている
骨は生きている組織で、古い骨を壊す「骨吸収」と新しい骨をつくる「骨形成」を繰り返しながら、常に生まれ変わっています(骨代謝)。加齢や閉経などでこのバランスが崩れ、骨を壊す働きが骨をつくる働きを上回ると、骨がどんどん減っていき、骨粗鬆症が進行します。
骨折しやすい部位がある
骨粗鬆症で特に注意したい骨折は、①足の付け根(大腿骨近位部骨折)、②背骨(椎体骨折)、③肩(上腕骨近位部骨折)、④手首(橈骨遠位端骨折)の4か所です。中でも足の付け根の骨折は、歩行が困難になり、寝たきりや要介護状態につながることも少なくありません。背骨の骨折は自覚のないまま生じ、身長が縮んだり、背中が丸くなったりすることで気づかれることもあります。
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大腿骨近位部骨折
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椎体骨折
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上腕骨近位部骨折
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橈骨遠位端骨折
一度骨折すると次の骨折を起こしやすい
一度骨折を経験すると、次の骨折を起こすリスクが大きく高まることが知られています。例えば足の付け根の骨折後は反対側の骨折リスクが約6倍に、背骨の骨折後は次の背骨骨折のリスクが約2倍から3倍に増えることが知られています。こうして次々に骨折が続くことを「ドミノ骨折」とも呼ばれます。したがって、骨粗鬆症による骨折を起こした後は、しっかり骨を強くする治療を続けることが大切です。
骨粗鬆症と骨折の予防のポイント
骨折を防ぐためには、①骨密度検査などによる早期発見、②運動、③栄養、④必要に応じた薬物治療、この4つに継続的に取り組むことが大切です。特に閉経後の女性や高齢の方は、症状がなくても一度骨密度検査を受けてみることをおすすめします。自治体が実施する骨粗鬆症検診、人間ドック等のオプションでの骨密度検査、また、腰痛や身長低下、最近背中が丸くなったといった兆候のある方は、病院やクリニックの整形外科などで検査を受けることができます。「まだ痛みもないから大丈夫」と思わずに、ぜひ一度検査を受けてみましょう。ご自身やご家族の将来のために、骨粗鬆症について正しく理解し、早めに予防を始めることが大切です。
2骨粗鬆症の薬について
骨粗鬆症の治療において、食事や運動とともに大切なのが薬物治療です。骨は加齢や閉経、遺伝的な要因によっても弱くなるため、生活習慣の改善だけでなく、多くの人にとって薬による治療が重要になります。骨粗鬆症の薬は、骨密度を高めるだけでなく、実際に骨折を減らす効果が、何千人、何万人もの患者さんを対象とした研究で証明されています。
骨粗鬆症の薬は、大きく分けて①骨を壊す働き(骨吸収)を抑える薬、②骨をつくる働き(骨形成)を促す薬、③骨に必要なビタミンやミネラルを補う薬(活性型ビタミンD、ビタミンKなど)の3種類があります。飲み薬のほか、注射薬もあり、毎日、週に1回、月に1回、半年に1回など、薬によって使い方はさまざまです。ご自身の生活スタイルに合わせて選ぶことができるので、通院の負担が心配な方は医師にご相談ください。
例えば、代表的な薬であるビスホスホネート薬は、腰の骨(腰椎)の骨密度を6~9%、足の付け根の骨(大腿骨)の骨密度を3~4%増やし、これらの部位の骨折リスクを半分程度に減らすことが分かっています。他の薬でも同様に、またはそれ以上に骨密度を高め、骨折を大きく減らす効果が確認されています。
骨粗鬆症の治療で最も大切なことは、薬をしっかり継続することです。薬によって骨密度が改善しても、自己判断で中断すると再び骨密度は低下してしまいます。これは、収入がなくなれば貯金が減っていくのと同じことです。骨粗鬆症による骨折は、寝たきりや生命予後の悪化にもつながるため、痛みがない、あるいは骨密度がなかなか上がらないからといって、自分の判断で薬をやめないようにしましょう。薬の内容は、治療の経過に応じて医師が調整し、十分な効果が得られれば治療を終了することもあります。飲みにくさや副作用が心配な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。近年は薬の選択肢も増えており、それぞれの生活状況や骨折リスクの程度に合わせて、より無理なく続けられる治療を選ぶことができるようになっています。
3骨折予防のための運動
骨は、体重や衝撃などの「負荷」がかかると強くなり、逆に体を動かさないでいると弱くなるという性質を持っています。これは骨の大原則ともいえるもので、運動によって骨に適度な刺激を与えることで、骨密度と骨の質の両方を改善することができます。また、運動には筋力やバランス能力を高め、転倒そのものを防ぐ効果もあるため、骨折予防には運動がとても重要です。実際に、背筋を鍛える運動を続けた研究では、10年後の背骨の骨折が半分以下に抑えられたという報告もあります。
運動は、大きく分けて①有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)と②筋力トレーニング(スクワット、背筋運動など)の2種類があります。運動効果を高めるコツは、「ややきつい」と感じる強さで行うこと(過負荷の原則)と、負荷を急に上げず少しずつ増やしていくこと(漸進性の原則)です。普段どおりの速さで歩くだけでは、骨や筋肉を強くする効果はあまり期待できません。
具体的には、①スクワット(腰を後ろに引くように膝を曲げ伸ばしする運動を10~15回、1日2~3セット)、②片脚立ち(片方の足を5~10cm上げて左右1分間ずつ、1日2~3回)、③かかと上げ(両足で立った状態から踵をゆっくり挙げて、ゆっくり下ろす運動を1日50回程度)、④やや速足も含めたウォーキング(1日30~60分)などがおすすめです。①③④はロコモーショントレーニング(ロコトレ)とも呼ばれ、ロコモティブシンドロームの予防にも役立ちます。ただ片脚立ちや踵上げは、立ったり歩いたりが不安定な方は、何かにつかまって行ってください。
持病がある方や痛みが心配な方は、まず主治医にご相談ください。運動中の痛みが運動後30分程度で治まるようであれば続けて構いませんが、痛みが翌日まで残る場合は無理をせず休みましょう。年齢や体力に応じて、無理のない範囲で毎日少しずつ、長く続けることが何より大切です。運動は骨や筋肉を強くするだけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にも役立ちますので、できることから習慣にしていきましょう。
4骨粗鬆症の予防と改善のための栄養
丈夫な骨をつくるためには、カルシウムだけを摂ればよいわけではありません。体の中では様々な栄養素が影響し合っているため、たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、多くの栄養素をバランスよく摂ることが大切です。毎日の食事では、エネルギー源となる「主食」(ごはん、パン、麺など)、体をつくる「主菜」(肉、魚、卵、大豆製品など)、体の調子を整える「副菜」(野菜、海藻など)をそろえることを基本にしましょう。
骨はカルシウムだけでなく、その約半分をたんぱく質(主にコラーゲン)が占めています。たんぱく質が不足すると、骨だけでなく筋肉も減り、体力や免疫力の低下につながるため、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など、いろいろな食材から毎食まんべんなく摂ることが重要です。
カルシウムは体内に最も多いミネラルで、その99%が骨や歯に存在します。血液中のカルシウムが不足すると骨から溶け出してしまうため、乳製品、骨ごと食べられる魚、大豆製品などから積極的に摂取しましょう。良質なたんぱく質や酢、クエン酸と一緒に摂ると吸収がよくなる一方、塩分やアルコール、喫煙の摂りすぎはカルシウムの利用を妨げるので注意が必要です。
ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収を助け、骨への沈着を促す働きがあり、鮭やさんまなどの脂ののった魚類、卵黄、きのこ類に多く含まれます。適度な日光浴も、体内でのビタミンD合成を助けます。ビタミンKは、カルシウムを骨に取り込む際に必要なたんぱく質を活性化する栄養素で、納豆や緑黄色野菜、海藻に豊富です。これらの栄養素を毎日の食事で意識してバランスよく摂ることが、骨と筋肉の健康を守るポイントです。特定の食品や栄養素だけに偏らず、主食・主菜・副菜のそろった食事を続けることが、長い目で見て一番の近道といえます。食欲が落ちがちな方は、無理に一度に食べようとせず、間食などを活用して1日を通して必要な栄養を確保する工夫も有効です。
5骨粗鬆症リエゾンサービスについて
骨粗鬆症は、骨折して初めて気づかれることが少なくない病気です。しかし、骨折してしまってからでは、寝たきりや要介護状態につながるリスクが高まります。そこで生まれたのが「骨粗鬆症リエゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service:OLS)」という取り組みです。「リエゾン」とは「連携・橋渡し」という意味で、患者さんと医療者、そして多くの職種をつなぐ役割を表しています。
もともとは1990年代にイギリスで始まった「骨折リエゾンサービス(Fracture Liaison Service:FLS)」が原型です。イギリスでは、一度骨折した患者さんに次の骨折(二次骨折)を防ぐことに重点が置かれていますが、高齢化が進む日本では、骨折する前の骨粗鬆症の段階から介入することを目指し、日本骨粗鬆症学会を中心にOLSとして広がってきました。
OLSでは、医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など多くの職種がチームを組み、骨粗鬆症や骨折後の患者さんを支えています。具体的には、病気や治療についての説明、運動や栄養の指導、薬の飲み方や継続についてのサポート、地域での啓発講演会の開催などを行います。こうした専門知識を持つスタッフは「骨粗鬆症マネージャー」として認定される制度もあり、全国ですでに3千人を超えるスタッフが活躍しています。
リエゾンサービスに取り組む医療機関では、薬による治療の継続率が大きく向上することが報告されています。2022年からは、足の付け根を骨折した患者さんに対するこうした取り組みが、診療報酬でも評価されるようになり、全国で導入する医療機関が増えています。骨粗鬆症の治療は、医師だけでなく多くの専門職と患者さん自身が力を合わせることで、より効果的に骨折を防ぐことができます。ぜひ、通院先の医療機関でどのような支援が受けられるか、確認してみてください。骨折後の患者さんだけでなく、まだ骨折していない方にとっても、こうしたチーム医療は心強い味方になります。