論文タイトル

大腿骨近位部骨折術後における入院中転倒の実態と関連因子の検討─単施設後方視的コホート研究─

著者名:田中暢一、村瀬剛

  • 大腿骨近位部骨折
  • 院内転倒
  • 認知機能
  • 二次性骨折予防
  • 転倒予防

発行日:2026/8/31

学会誌名:The Journal of Japan Osteoporosis Society

巻・号:Vol.12 No.3

抄録

目的:大腿骨近位部骨折は高齢者に多く,術後の院内転倒は機能回復の遅延や合併症増加を招く重要な問題である.しかし,本疾患に限定した術後転倒の時間的特徴や危険因子は十分に明らかではない.本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後における院内転倒の発生状況および時間的分布を明らかにし,術前情報との関連を検討することである.

方法:2020年1月~2024年12月までの間に,当院で大腿骨近位部骨折に対して手術を受けた1,327例を対象に単施設後方視的コホート研究を実施した.入院期間全体における転倒発生状況を記述的に検討するとともに,危険因子解析では術後15日間を観察期間とし,転倒発生までの時間を考慮したCox比例ハザードモデルを用いた.

結果:入院期間中に96例(7.2 %)で転倒を認め,転倒率は3.81件/1,000患者日であった.転倒は術後早期に集中し,全体の62.5 %が術後8日目までに発生した.危険因子解析(術後15日以内)では,85例がイベントとして解析対象となった.多変量Cox比例ハザード解析の結果,理解力・記憶力の低下(ハザード比1.99, 95 %信頼区間1.22~3.27,p<0.01)が独立した危険因子として抽出された.感度分析においても同様の結果が得られた.

結論:大腿骨近位部骨折術後の院内転倒は術後早期に集中し,特にベッドサイドで発生しやすいことが示された.理解力・記憶力の低下は独立した危険因子であり,術前評価に基づく早期からの予防的介入が重要である.