ごあいさつ

理事長就任にあたり
新潟大学大学院医歯学総合研究科整形外科学分野 遠藤 直人

2019年11月

日本骨粗鬆症学会の理事長に就任をいたしました。副理事長の竹内靖博先生をはじめ、理事、監事の先生方とともに運営をしてまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

本学会は「骨粗鬆症」疾患を対象としている学会です。原発性および続発性骨粗鬆症、ならびに関連する疾患や病態を含め、基礎的・臨床的研究の進歩・発展を図り、社会の福利厚生に貢献するものです。骨粗鬆症学会では様々な専門領域の医師をはじめ、多くの職種の方々が参加しております。これは大変大きな強みです。実際の診療の場、介護や福祉の場では多くの職種の方が骨粗鬆症の治療と予防、骨折患者さんに関わっておられます。多くの職種の方でチームを作り、対応をしていくことが大切です。そのために学会として今まで以上の取り組みをしていきたいと思います。

骨粗鬆症の個人レベル、地域や社会レベルでの位置づけは?
骨粗鬆症では骨脆弱により骨折をきたします。骨折は日常生活動作を困難にし、生活の質を低下させます。さらに要介護、寝たきりに至る例もあります。これは骨折をきたした方(個人)において大変苦しいことです。同時に家族においてもそのケアと対応は多くの負担となるものです。さらには社会としても大きな負担です。脊椎椎体骨折や大腿骨近位部骨折者の生命予後は非骨折者に比して不良です。また一回骨折をきたし方はさらなる骨折(続発骨折:骨折連鎖)をきたすリスクが高いこともよく知られています。
以上のことから
「骨粗鬆症は健康寿命を障害する疾患であること」
「骨粗鬆症では骨折をきたし、生命予後不良であること」
「一回骨折をきたした方は骨折高リスク者であること:骨折連鎖を食い止めるが必要」
したがって骨粗鬆症は個人のレベルにおいても、家族や社会にとっても大変重篤な疾患であるといえます。自立した生活を阻害することから、人生を左右する重篤な疾患としてとらえることができるでしょう。

骨粗鬆症への予防と管理の対象は?
骨粗鬆症は閉経後の女性に多くみられることから女性の、それも高齢の方の疾患とみられがちです。しかし、骨粗鬆症は男性でも見られます。また内臓器の障害や疾患による疾患関連骨粗鬆症(内分泌疾患、糖尿病やCKDなどの生活習慣病、関節リウマチなど)、治療関連骨粗鬆症(ステロイド性、性ホルモン低下療法など)、さらには長期臥床や運動不足、栄養障害による骨粗鬆症も見られるところです。さらに若い女性や小児においてもみられることがあります。
骨粗鬆症の究極の対策と予防の一つの柱は 小児や若い世代の方で骨を丈夫に大きくすることであると思います。高い骨量で、丈夫な骨を若いうちに作っておくことはその後の閉経、加齢等による減少があってもその影響を最小限にとどめることになるもと思います。
このことから骨粗鬆症は女性だけでなく男性にも(性別を問わず)、高齢者から若い女性さらには子供においても注意し、対応をするべき疾患です。いわば全世代の方が対象になるものであり、生涯にわたり骨粗鬆症への予防と管理が大切です。

骨粗鬆症の予防と治療の重要性は益々増すものと思います。学会員の皆様の協力を得て、骨粗鬆症への取り組みを介して健康寿命延伸をめざし、社会への貢献を果たしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。