ごあいさつ

理事長就任にあたり
独立行政法人労働者健康安全機構 山陰労災病院 萩野 浩

2023年11月

このたび日本骨粗鬆症学会理事長を拝命いたしました。
副理事長の三浦雅一先生、井上大輔先生とともに学会を運営してまいりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

わが国では75歳以上の高齢者が2,000万人を超え、100歳以上の方々も9万2000人を超える超高齢社会となっています。骨粗鬆症が引き起こす脆弱性骨折は、高齢者の健康寿命を短くし、医療経済にも大きな負担をかけるため、骨粗鬆症の予防や治療は極めて重要な社会課題です。

骨粗鬆症は沈黙の疾患と呼ばれ、症状がなく進行していくため、初期の段階では見過ごされがちです。したがって症状を欠く早期での発見が不可欠であり、そのためには骨粗鬆症検診が非常に重要です。学会ではこの検診の普及と啓発に取り組み、骨折を未然に防ぐための基盤を築く必要があります。

骨粗鬆症が原因で発生した脆弱性骨折は、連鎖的にさらなる骨折、「ドミノ骨折」を引き起こします。このドミノ骨折を未然に防ぐためには、初回の脆弱性骨折を経験した患者に対する2次性骨折予防が極めて重要です。この取り組みも本学会の重要な活動で、効果的な予防策であるリエゾンサービスの普及に注力したいと存じます。

骨粗鬆症の診断では骨折リスクの正確な評価が欠かせませんが、質的な評価にはまだ限界があります。生活習慣病やがん治療にともなう骨折リスクの上昇、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の発症についても不明な点が多いのが現状です。このため、より優れた骨折リスク評価のための新しい技術が必要です。

骨粗鬆症治療は新しい薬剤の発展によって、近年、長足の進歩を遂げています。しかしながら適切な薬剤選択や逐次治療、目標達成値についての知見はなお十分では無く、今後もエビデンスの蓄積が必要です。有効な運動療法、食事療法の解明も、学会が積極的に取り組むべき課題です。

このため、本学会では以下を学会の重要な活動として進めてまいります。

1) 骨粗鬆症検診・早期診断の推進
2) 二次性骨折予防の推進
3) 骨粗鬆症予防のための運動・栄養改善の推進
4) 骨粗鬆症診断技術の発展
5) 骨粗鬆症治療法の開発推進

本学会は1万人を超える会員を擁し、そのうち骨粗鬆症マネージャーが4000人近くを占めています。会員の皆様が、その知識と経験を活かし、これらの活動を積極的に推進いただければと期待しております。

会員の皆様と取り組む骨の健康維持と骨粗鬆症の予防・治療により、社会全体の健康向上に貢献してまいります。ご協力とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。